2018/12/13号外


学生会解散か

 本学法学部学生会執行部は本13日の後期総会で、学生会そのものの存続を審議課題にする。

 同執行部は総会に先立つ8日、学生会の解散に関する同学生会規約の改正案を公示した。

 公示された議案によると、後期総会で学生会の解散が発議された場合、学部生らを対象にした「学部投票」で信が問われることになる。

 解散を規定する今回の改正案を提出した本学法学部学生会執行部は、解散の理由に組織を運営する人数不足を挙げる。この状況が継続することで同執行部が行っていた業務の継続や資産の維持管理が今後難しくなることが懸念されていた。

 学部選挙が行われず「三役」が成立しなかった場合、同学生会規約によってその年の同執行部が組織されず、学部生から任意徴収した分を含め9百万円以上もの運営資金が所有者不明になる可能性がある。

 同執行部は、組織の解散と共に運営資金の残りを法学部当局に寄付することで、無主の状態を回避する狙いだ。

 13日に開催される同学生会後期総会では、事前に語学クラス、ゼミから選出された「クラス委員」に投票権がある。例年、総会の定足数と同程度の50~70名程度が参加しており、今回も約3千人の学部学生にとって少数の採択が見込まれる。ただ、一般的な学生には縁遠い多額な資金を抱えての「解散学部投票決定」は、学生自治を掲げて存続する同学生会としては皮肉な最期になりそうだ。

 同学生会後期総会は、13日18時半から、8号館地下B101教室で開催される。休停学中でない限り留学生を含め法学部に学籍があれば傍聴が可能。同日は同議案に先立って、学生有志が提出した対抗議案の審議が行われる。

 本学法学部学生会は、1933年発足の「法学会」(現存)を祖とする学生運営の自治組織。2012年に政治セクトへの関与を禁じるなど規約改正を実施して組織を改組。法学部学生は入学時に全員が加入する。

 同執行部は、学生の自主的な「学生生活の改善・充実」を達成目標に、学部学生を対象にした交流イベントを開催したり、法学学術サークル(「法サー」)等の活動に際して学部生と法学部当局との間で便宜を図ってきた。

 本学には学生運営の自治組織が最盛期に9つ存在したが、法学部学生会以外に現在活動の実態がある組織はない。

 

 



ドキュメント

  法学部の語学クラス、ゼミから選出される「クラス委員」の下に一通のメールが届いたのは1日のことだった。

 「総会で『学生会解散』を議題にする」(2年「クラス委員」)。

 彼らにはその前日、法学部学生会執行部から13日後に開かれる「総会」への招集が呼びかけられていたばかりだった。

 その日、8号館1階の学生会掲示板に「解散を議題とする」公示が載った。最終的にそれが「法学部生を対象にした投票による」と確定したのは、1週間後で議案が提出された8日、学生会の公式ツイッターで告知されるには更に4日待たなければならなかった。

 本学法学部学生会執行部は公称の祖を、戦前から続く「早稲田大学法学会」(現存)におく。本来教授主体で学生との親睦団体としての性格を持っていたこの組織が、戦後に学生の自治実現のための結集軸として「学生自治会」の形に分離再編され、今日に至る。

 近年では「自治」的機能を制度、運営両面から弱めることで、学生運動由来の学生自治に対する暗いイメージを克服しようという動きも見られたが、ここ数年のうちでも同執行部への新規参加者は徐々に減ってきている。同執行部が毎年催してきた新入生対象の交流イベントからの人員獲得は去年、今年でついにゼロになった。学生自治への関心の薄れだった。

 ついに今年で執行部員は6人となり、2012年に同学生会を改組して以後でも最盛期の約3分の1になった。そのうち来年度に幹事職につく現2年生は実質1名しかいない状態という。

 同執行部の業務を組織運営の面からみると、実務職の「三役」と、「三役」を学生に選出させる上での「選挙管理」に分類できる。同学生会規約によって両者の兼任が不可能だと定義される。

 また同規約の規定どおりに選管業務がなされない場合、「三役」の選出も制度上なされないため、「執行部の人数が少ない」のは、ひいては業務がストップすることを意味する。とりわけ、同執行部は学部生から任意徴収した分を含め900万円以上の資金を有しており、執行部の実態が無くなることは、一時的にであれこの資金を無主にすることと同意だ。ただ、組織運営が同規約上、「三役」の2選や、他の法学部生を臨時要員として選管業務に従事させることは可能だという。

 「総会」は同執行部会長の権限で年に2度開くことが同執行部規約に明記されている。ここではあらかじめ語学クラス、ゼミから選出された評議員「クラス委員」がひと「クラス」1票の投票権を持つ。

 「総会」開催の定足数は「クラス」総数の3分の1以上だが、制度の改廃について議決する際は、定足数を「クラス」総数の半分以上とし、その発議は3分の2以上の賛成によると定める。

 また、「学部投票」は総会での発議または署名による直接請求によって開催されるものであり、有効投票数を全学部生の3分の1以上、有効投票数の過半数以上で可決と定める。

 同執行部によると、法学部生であれば基本的に「学部投票」の投票権を持つが慣習的に法学部で留学する学生の投票権は妨げられないという。ただ、法学部籍で外部に留学している、または休停学中の学生についてはその投票権を保障しないとする。

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 同執行部は本紙へのインタビューで、改正案が可決されて総会での発議が得られた際には、早ければ1月中にも「学部投票」を行う意向を示した。



学部生たちの声

 「学生会解散」審議の突然の発表に「法サー」関係者からは驚きの声が聞かれた。

 同学生会が新勧期のサークル活動を仲介したり、「法サー」や学部ゼミ宣伝冊子の作成、企画を担うからだ。

 ある「法サー」関係者らは「よくやってくれていただけに残念。なくなると困るから存続してほしい」「新歓予定など例年と変わりないと聞いていたが、もしものときは一体どうなるのか」と語る。

 とはいえ、一般の法学部生の視点は冷ややかだ。「任意支払いとはいえ会費8千円は高い」「学生会と関係のないゼミも多い」「直接付き合いが無ければ印象にも残らない」「大学が学生組織以上に不足無くやってくれたらいいだけ」。このようなコメントは、同学生会の置かれている現状と無縁ではない。



【論説】

今回の「解散劇」は早急、稚拙に過ぎる。

 議案提出で挙げられた理由は人員不足という「執行部」組織の内的要因であり、学生自治を担う公的な団体の存続を問う状況としてはそもそも適するものだったのだろうか。

 確かに「執行部」の人材難こそが学部生の学生自治への正直な心情を表しているのかもしれない。

 しかし、それが「執行部の総意」として自ら自治機関を壊す決断を提示した「執行部」の弁護にはなるまい。

 また、「学部投票」の結果を教職員が追認する保証もない。

 「執行部」は「学部投票」での「学生の意思」決定を教授会に提示する考えを示したが、過去、本学の教員・職員が「学生の意思」相手であっても、冷淡であったかむしろ弾圧的な態度に出た事案は、本学においても枚挙にいとまがない。

 今のところ「執行部」は正式に教授会と接触をしておらず、事務所(職員)とも本件の審議実施を通告したのみという。 とはいえ、学部生一般の自治に対する感覚と「執行部」への加入希望が低調なのは見ての通りである。唯一本案に反抗する「対抗議案」も提出者は学生会会長経験者であり、この争いも「執行部」内部での内輪喧嘩の延長線でしかないのだろうか。

 現在の早大は、文キャンでの立て看板規制や学費問題など、学生自治が再び顧みられるべき情勢だが、今回、その「当事者」組織の終焉を問うようなな形で議論が現れたのは、残念だ。