4月号(2019年)


コンテンツ

★1万の卒業生

 3月25、26日、本学の卒業式が行われた。8708人の学部生のほか、大学院、芸術学校を含め総勢1万1485人の卒業生が都の西北から羽ばたいた。

 会場は同25日に本格併用された早稲田アリーナが用いられ、卒業生に新施設から華を添えられた格好だ。

 25日の卒業式に参加した法学部の卒業生(22)は「多様性ある早大で、勉学だけでない学びを得られて幸せだった」と喜びをかみしめていた。

 

★一般・センター入試前年並み

 3月8日、本学入学センターは一般入試とセンター利用入試の入試結果について人数の速報値を発表した。

 発表によると、全学部の両試験合格者数は1万3962人で、前年から5人減少した。昨年と比較して募集人数が140人、志願者が5871人それぞれ減少した本年の入試だったが、合格者はほぼ前年並みとなった。

 私学定員厳格化の流れにより、都内私立大学の入試情勢は年々難化しているとされる。

 

★学生会館地下2階からのインタビュー

 「早稲田大学学生会館地下二階の練習場所を確保したい人」というアカウントがある。

 去年、早稲田大学では、多数の学生の大学における自由に関する問題が発生した。立て看板

の撤去問題、出版サークルのオープンキャンパスからの突然の締め出し、早稲田祭において「校内雰囲気創出」の名の下で強行されかけた立て看撤去問題などだ。このような問題に加え、学生会館でも大学当局側による学生活動の自由を侵害する事件が起こっていた。学生会館の地下2階練習場が使用禁止になったのだ。

 前に掲げたアカウントは当局側の措置に対して疑問を抱き、ある一人のダンスサークルの学

生によって立ち上げられたものだった。今回はこのアカウント主にインタビューを行った。

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弊紙記者(以下「記者」):本日はインタビューに応じていただきありがとうございます。早

速ですが、今回の地下2階練習場に関する問題についていくつか質問をさせていただきます。

よろしくお願いいたします。

アカウント主(以下「主」):よろしくお願いします。

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記者:地下2階の練習スペースはどのような用途で使用されていたのですか?

主:私はダンスサークルに所属しているのでダンスの練習に使用していました。他の様々なサ

ークルもそれぞれの活動に使用していました。

記者:いつ頃に当局側からの禁止命令がありましたか。

主:(去年の)9月だったと思います。

記者:ご活動を始めたのはいつからでしょうか。

主:アカウントを作ったのが9月29日なのでその頃からです。

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記者:どのような問題意識を持ってご活動を始めたのですか。

主:まずは練習場所を取り戻したいという単純な思いからでした。しかしこれはそれだけの問

題ではなく、学生の自由が大学から奪われているということでもあると思いました。このまま

誰も声を上げないのであれば、これからもこのままなし崩し的に生徒の活動が制限されていっ

てしまう危険性を孕んでいると認識しています。

記者:そもそもどうして大学は地下2階の練習場を使えなくしたのでしょうか。

主:禁止命令が下る決め手となったのは生徒の1人が活動中に救急車を呼ばなくては行けない

ほどの事故を起こしたからだと学生生活課からは聞いています。詳しい内容は明かしていただけませんでした。

記者:地下2階練習場が使えなくなったことによってどのような実害が生じましたか。

主:我々のサークル員は練習場所が制限されて不便に感じています。他のサークルの人たちも

同様だと思います。

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記者:大学とのやり取りではどのように感じましたか。

主:私は個人名義で要望書などを出しているからというのもあるかもしれませんが、理由すら

説明しないのはあまりにもぞんざいで生徒を舐めた態度だと思います。一般論として納得がい

くはずもない。

記者:そのほか学生に対する対応などについてはどうお考えでしょうか。

主:確かに事務所の1人は私と話し合ってはいただけましたが、結局決定権は上層部にある

のでそれで何か事態が好転するわけではありませんでした。その上層部が生徒との対話を拒否

しているということは表向きでは良いことを言っていても結局彼らは生徒を自分たちと対等の

立場だと思っておらず命令は全て聞くものだとたかをくくっているのだなと考えています。

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記者:活動は個人でやっているのですか。

主:個人です。

記者:なぜ個人で活動されているのですか。

主:個人でやっている理由は、何か学生生活課とトラブルが起きて他のサークルのメンバーの

練習に支障をきたすことになるという事態だけは避けたかったからです。当時は最高学年でも

なかったので。しかし個人では影響力に限界があるなというのは近頃薄々感じています。

記者:これからどのような形での活動をお考えですか。

主:声を少しでも上げ続けることが大切かなと思っています。

自由を奪われていることに対して声を上げる生徒が存在するというだけでも意味を持つんじゃ

ないかなと感じています。1人でも多くの人たちにこの事実を知ってもらえるように、また行

動に移すことを促せたらいいなと思います。具体的にはこれからも呟きを続ける、学生生活課

の上層部と話をしてもらえるように何度も直談判する、時間さえ許せば署名活動やビラ配りな

どができたらいいなというところです。

     (聞き手:伊東圭右)

 

★入学式会場移転で新歓影響

 入学式を終えて、大隈講堂を背景に記念写真を撮り、新歓の「花道」を抜けてキャンパスに足を踏み出す……ここ数年、本学入学式の風物詩になっていたこの流れはどのように変わるだろうか。今年より入学式会場が早稲田アリーナとなり、「本キャン」の新歓スペースから大きく離されてしまう。新歓人員の少ない中小サークルでは、新入生獲得のため対応に迫られるところも出ている。

 1月、学生活動を担当する本学学生生活課が新歓日程を発表した。その中で、昨年まで可能だった戸山キャンパス内の新歓活動が入学式等々での「入退場時の混乱を避けるため」新たに禁止されることになった。

 この変更は、これまで大隈講堂で行われていた入学式が戸山キャンパスに新設された早稲田アリーナでの開催となることにあわせてとみられる。

 これによって難度が増すのが、新入生の誘導だ。入学式会場を出て目の前に当局指定の新歓スペースがあるという状況が、今年からは4百メートルの移動を求められるようになった。それに加え、戸山キャンパスでの新歓ができなくなったことで、新歓担当の学生は、新歓スペースへ来る学生を待つ「守りの姿勢」を求められることになりそうだ。

 ここ数年、学部ごとに行われる大隈講堂での入学式を終えて、校門を抜けたあたりで大隈講堂を背に記念写真を撮る、という流れが入学式の定番だった。新歓する学生側はそれに合わせ、撮影スポットから学内の新歓スペースに向けて「花道」をつくり、各サークルの宣伝を行っていた。

 だが今年からは3~4学部の合同開催になったほか、入学式会場が戸山キャンパスとなり、いくらか距離ができた。戸山キャンパスから新歓スペースまでは幅の広くない歩道を通ることになるほか、一度に以前の3倍近い学生が動くため、新歓スペースまで自然と足を運ぶのは難しくなる。

 今回の変更に対し、サークル側の態度は様々だ。ある出版サークルの担当者は「出版サークルは比較的人気があるので、大手を見たついでに他もという流れがあるから心配しない」とする。また、別の学術サークルの担当者は「本サークルに加入を希望する新入生は調べてでも来るから、そうでない方はそもそも考慮しない」と明かす。

 ただ、趣味を対象にするなどの中小サークルでは「知名度が大きくないので、入学式終わりの人の流れに身を任せたい」「SNSや入学式シーズン以外の新歓を活発化させていきたい」などといった声も聞かれた。

 

★google map 早大でも表示ミス

 3月22日の新バージョン公表以後、数々の「ミス」が報告されている"Google Map"だが、本学に関しての誤表示も確認されている。

 そのうち、早稲田キャンパスではポータルオフィスなどが設置されている7号館の場所に、向かいの8号館に設置されているはずの法学部が表示される「ミス」が発見された。3月30日現在でこの誤植は改善されていない。このほか、同キャンパス南門が南門通りと接続していないなどの誤表示も確認できる。

 

★「解散」法学生会 新入生オリ開催

  昨年末に解散が審議されていた本学法学部学生会は、3月28日、8号館で法学部新入生を対象にしたオリエンテーションを開催した。毎年、同学生会執行部と本学の法学サークルが連名で行っているもの。

 約3百人が参加した今年のオリエンテーションだが、昨年まで実施されていた同学生会運営費の徴収は行われなかった。

 同学生会は昨年12月以降、組織運営を担う執行部の人材不足を理由に同学生会規約の変更による組織解散を検討していたが、採決定数に満たなかったことなどを理由に審議がストップしていた。参加者によると、同学生会の存廃に関して公的な説明はなかったという。

 

★教育力ランキング 早大3年連続下落

 3月27日、「THE大学ランキング日本版」が改定された。早大は13位で、3年連続で順位を落とした。1位は京都大学、慶應大学は14位だった。

 英国の教育専門誌とベネッセが2年前から毎年調査しているもので、各校の学びの質や成長性を比較しているという。

 

★雑誌「蒼生」 文構セクハラで場外戦

 本学文化構想学部文芸・ジャーナリズム論系の講義を受講した学生たちが主体となって企画やデザインなどを行い、毎年発刊している雑誌『蒼生』。3月刊行の今年号に掲載された、特集「文学とハラスメント」が一部で波紋を呼んでいる。

 昨年6月末、本学文学学術院教授の渡部直己氏による教え子に対するセクハラ疑惑がネットニュースなどに報じられ、翌7月末に大学当局から解任された。この一連の〝セクハラ騒動〟を受け、ハラスメントについて文芸・ジャーナリズム論系の学生が主体的に考える場を設けたいという意思のもと、「編集実践2」の授業を受講していた3名の学生により、今年3月に刊行予定だった『蒼生2019』に「文学とハラスメント」という特集が組まれた。

 しかしその学生らは、特集を組むにあたり、講義の担当教授から、例年に比べ特集記事に割くことのできるページ数を大幅に削減されたり、特集を自発的に取り下げるようにするために誘導されたりなど、数々の妨害を受けたとして『蒼生2019』内で告発している。記事内では、妨害を行った担当教授として、文学学術院准教授の市川真人氏や、『早稲田文学』編集部に所属し、本学非常勤講師でもある北原美那氏の名前が実名で挙げられていた。

 また、学生らは特集を組むにあたり、言論の束縛などを一貫して批判している小説家、笙野頼子氏らに、担当教員から妨害を受けていると伝えた上で、『蒼生2019』への寄稿を依頼した。これを受けて笙野氏は、『これ?二〇一九年蒼生の解説です』という題の記事を寄稿。この記事で笙野氏は、市川氏や北原氏が行ったとされる妨害行為を言論統制であるとし、教授らの実名に触れ、徹底的に批判した。

 これに対し市川氏や、北原氏とみられる人物はそれぞれネット上の投稿サイト「note」にて、笙野氏の寄稿には事実に反することが多々見られるという趣旨の反論文を発表。学生らが妨害されたと感じたものの根本的な原因は、教員と学生間に生じた誤解にあるとし、妨害行為そのものを否定した。

 同時に両氏は、文学学術院や文芸・ジャーナリズム論系の対応に関して、笙野氏の原稿をざっと目を通しただけで「文学として完成されている」とし、校正校閲の不要を唱えるなどの点を不可解とし、強い苦痛を受けたと主張している。

 さらに、市川氏の反論文からは、笙野氏の元に近々「訴状」が送られてくることを示唆した記述も見られる。仮にそれが事実であるとすれば、この一連の問題は法廷に持ち込まれ、さらに泥沼化の様相を呈することもありえる。

  今回の『蒼生』問題について、学生からは様々な反応が寄せられた。

 今年文ジャ論系の専攻を決めたという学生(20)は、「しょうもないところから論争が起きていて、見るに堪えない」と語り、新学期の雰囲気に不安をにじませる。

 また、同学部表メ論系の学生(21)は、「セクハラ疑惑発覚時に大学側が情報公開に消極的だったことが今日の不信感の源ではないか」と苦言を呈した。

 他大学でフェミニズムを専攻する学生(21)は、「『反フェミ』を喜ばせる気はないが、特集自体裏付けが乏しい部分もあるのでは」と指摘する。

 今回、弊紙編集部では文ジャ論系、『蒼生』編集長の両者に取材を申し込んだが、3月30日現在で返答はない。

 

★文キャン スタバ開業

 本学戸山キャンパスに新設された早稲田アリーナの2階に、3月25日「スターバックスコーヒー 早稲田大学戸山キャンパス店」が新たにオープンした。戸山キャンパスでの大手小売資本の進出は初めて。

 店舗自体は比較的小さいが、近くには友人などと談笑を楽しみつつコーヒーを飲めるようなスペースなども設けられており、文キャンの学生はもちろんのこと、本キャンからも数々の学生が訪れることになりそうだ。

 一方でお昼時など、多くの学生が早稲田アリーナ2階に集中する可能性もあるため、混雑への対策をどのように講じるかなど課題も多い。

 

★西早稲田ピカソ閉店

 小売大手ドン・キホーテの小型店舗である「ピカソ西早稲田店」が3月31日付を以て閉店した。早稲田キャンパス西端付近にあるスーパーマーケットは三徳1店舗のみになる。

 同店舗は2005年に開店し、廉価帯のスーパーとして周囲から親しまれていた。

 ドン・キホーテは同日付でピカソ5店舗を閉店すると発表している。

 

★早稲田駅 改札新設

 東京メトロ東西線早稲田駅の2番線(高田馬場・中野方面)ホーム中心付近に新たに出口が新設された。ホーム階に改札が新設され、そこから地上への直通エレベーターが設けられた。エレベーターを上がると本学40号館の隣に出る。

 早稲田駅にはこれまで1番線(西船橋方面)にのみエレベーターがあり、車いす利用者らは2番線へ向かうのに西側階段に併設された昇降機を利用するしかなかった。

 同駅西側階段はキャンパスに最も近いということもあり、多くの利用者が集中していた。

 駅側は新たな出口の新設で利用者の流動を分散させたい構えだが、利用の主眼と見られるハンディーのある方にとって改札が終日無人なのは少々不安なところだろうか。

 

★早大「タテカン」問題をもう一度考える

 近年、京都大学の大学当局によって強行される立て看板(タテカン)撤去とそれに対する学生の抗議活動についてご記憶の方は多いだろう。京都市の景観条例に基づいているとはいえ、大学側の強引な手法は学生自治や表現・言論の自由を犯すものとして多数メディアに取り上げられ、耳目を集めた。

 しかし、我らが母校、早稲田大学でも京大と同じ立て看板に関する問題が去年立て続けに起きていたことを新入生はともかく、学生の多くは知らないのではないだろうか。

 今や、京大と同じく、学生自治や表現の自由が侵犯されてしまっているにも関わらず、未だに多くの学生が問題を共有できていないのは由々しき事態だろう。

 そこで、本記事では昨年起こった「早稲田のタテカン問題」について再考していく。(本紙編集部)

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 早大の立て看板問題は昨年5月31日に端を発する。同日付で公認サークルの三役(幹事長・副幹事長・会計)に「8月2日をもって諏訪通り沿いの立て看板を撤去し、11月末をもって立て看板の設置場所を大学構内に限る」ことが告知された。この告知によって、今まで歩道側に設置し、学内者にとどまらず、学外者にも学生の活動についてアジテーションすることが可能だった立て看板が、学内者へのアピールに限定されてしまうことが予想された。明らかに、実質的

な「タテカン規制」だった。

 また、この告知はサークルの三役にしか送られていなかった。立て看板は名前と連絡先さえ記載すれば、学内者の誰でも設置が可能にもかかわらず、大学側は当初、全体の3%に過ぎない限られた学生にしか通知していなかったのだ。そのような状況の早大において、「タテカン規制」の問題が表面化するまでは、少し時を待たねばならなかった。

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 問題が、少数とはいえ学生に認知され始めたのは7月になってからだった。昨年7月6日、早大の大学自治に関してトークショーが行われた。14号館の一室を貸し切ったこのイベントは、座席定員140名に対し、立ち見が出る盛況ぶりだった。

 トークショーの直後、「早稲田の馬鹿らしさとタテカンを守る会」を名乗る学生が一人、壇上でアジテーションを始めた。先に述べた「タテカン規制」について初めて公になされた問題定義だった。これ以後その団体を中心として早大の「タテカン規制」反対運動は繰り広げられることになる。この時点では問題周知を行う立て看板の作成と設置、大学側との交渉を担っていた。全ては8月2日に予定された強制撤去を防ぐためだった。

 しかし、そのような精力的な活動にもかかわらず、ほとんど大学側との交渉も進まないまま期日は残酷に過ぎてしまった。アジテーションを書き並べた立て看板は京都大学とは違い注目を浴びることもなく、また、学生にもあまり響かなかったように思われる。しかし、反対運動に関わった人々は諦めていなかった。立て看板は結局撤去されたが、その後も大学側との話し合いは継続していたのだ。

 昨年8月2日。学生有志らの求めに応じた大学当局は、立て看板の撤去直前に初めて全学生に向け、立て看板撤去を通知するメールを送った。その文面には、新宿区の「みどりの条例」に基づいて、接道部を緑化せねばならず、立て看板を設置するためのフェンスが緑化された場所と道路の間にあると条例の規定を満たさなくなるため、立て看板は設置できなくなる、と説明があった。京都大学がタテカン撤去のために京都市の景観条例を理由にしたのと同じ構図だ。

 ところが、同9月20日、そのような大学の説明の正当性を失わせる出来事が起こる。この日行われていた新宿区議会の一般質問で、伊藤陽平区議会議員から新宿区の吉住区長に対し、以下のような質問がなされた。

 伊藤市議「新宿区みどりの条例が、早稲田大学戸山キャンパスの文化である立看板へ影響を与えていることについて、どのようにお考えでしょうか。緑化された箇所に新歓期等の臨時的な看板を設置することは『新宿区みどりの条例』で規制の対象には入らないと考えていますが、いかがでしょうか。」

 区長は以下の通り回答した。

 吉住区長「みどりの条例に基づく緑化は、事業者の様々な工夫により緑地の創出を目指すものであり、臨時的なものも含め、立看板そのものを規制する制度ではありません。」

 そう述べたうえで、法理念の達成のために、大学側が行おうフェンス撤去以外にも、植栽の造成や既存樹木の保存、壁面緑化などの選択肢が存在することを具体的に例示した。

 つまり、大学側が「公共の福祉」を達成するために持ち出した「みどりの条例」という尤もらしい理由が法的根拠に乏しいこと、またフェンス撤去による「タテカン規制」が法理念を逸脱しかねないこと、の2点が明らかになった。

 「タテカン規制」に反対する学生の有志はこの答弁に基づいて、規制の正当性はないのではないかとして再考を求めたが、昨年10月末に大学側は「担当者には協議したが、その上で立て看板設置は認めない」とのみ述べて交渉を打ち切った。この回答の翌日、タテカン設置用のフェンスは撤去された。彼らが昨年8月に全学生に示した「根拠」は半年たった今日まで訂正されていない。

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 翌11月は早稲田祭の季節である。直前ともなれば多くの学生が1年に一度の祭に向け準備に追われる最中のことだった。

 8月以降、学生有志が設置していた「タテカン規制反対」を訴える立て看板に対し、設置者と同じ早大生である「早稲田祭実行委員会」から「早稲田祭の構内雰囲気創出のため立て看板を一時的に撤去する」旨の通告がなされた。

 結局、有志による抗議によって撤去ではなく立て看板を移動することで話のケリはついた。学生自治を尊重して活動してきた学生有志が同じ早大生に予想外の攻撃を受けた形だった。なんたる皮肉だろうか。有志による活動が全く学生に響かなかったという、反省を迫られる事例だった。

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 早大のタテカン問題はこの後ほとんど進展がなかった。早稲田祭における問題は学生内の対応により早稲田祭でケリがついたが、大学側は学生に対して一方向の通告を繰り返すばかりだった。また、「早稲田の馬鹿らしさとタテカンを守る会」を初めとする早大生側の反応も類似の問題を抱える京都大学のそれと比べれば冷え冷えしたものだった。

 今やフェンスはなくなり、当時を偲ぶ物さえない。在学生が日々記憶から喪わせていくものを、ましてや新入生が諏訪通り沿いに設置された立て看板の存在など思い起こす由もない。規制はもはや達成され、「回復」が不可能のものとなったも同然だろう。

 早大の立て看板問題は、メディアの耳目を引くことさえなく、ひっそりと最悪の結末を迎えた。このように、大学側がいくら学生の自由を縛る凶行を行なっても正当化できる風潮は、他大学はともかく早大でも顕著になりつつある。ただ、当の学生からの反応は皆無に近い。主を失った早大の学生自治はひっそりと息を引き取ることになるのだろうか。弊紙は動向を引き続き追っていく。  (終)